有沢翔治の読書日記 : 雑記帳

【こんな小説を書いてます】

二人であることの問い

　双子の姉、亜衣の様子がおかしい。何かあったのではないかと真衣から萌は相談を受ける。やがて亜衣の部屋からバタフライナイフを買った痕跡が見つかり……。亜衣は何を考えているのか？

雑記帳

2024年02月18日14:15

コント「アルファベット」

カテゴリ: 雑記帳

　なまむぎなまこさんのツイートを見て思い浮かびました
「アルファベットを言うときは聞き違いを防ぐために地名とかを入れて説明すること。パソコンでのメモを忘れないように」
「解りました！　アリバイのAとかですね！」
「なんでスー・グラフトンなんだよ！　確かにA、B、Cって書いてるけれども。普通にアメリカっていえよ！」
「アメリカ銃のAですね！」
「エラリイ・クイーン！　普通に言えよ」
「解りました。ヨーク……」
「そうそう、そういう風にだな……」
「ヨーク・ハッターのY！」
「『Yの悲劇』じゃねぇか！」
「他にはSならスウェーデン……」
「『スウェーデン館』って言うなよ」
「スウェーデンマッチのSですね！」
「『中途の家』じゃねぇか。ってか読んでなきゃ解らねぇよ！　いい加減、ミステリから離れろ」
「解りました。SはスペースのSって言います」
「ブラッドベリじぇねぇか！　っていうか教科書で本でスペースキー押しっぱなしだぞ」

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2022年03月07日17:25

男女平等について

カテゴリ: 雑記帳

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はじめに

　本稿はすべての女性にとって真の平等について考えるために書かれている。
　共感だけでのつながりは危険である。例えば、ナチスドイツは共感だけで結びついたためにユダヤ人の虐殺につながった。また木村はなさんへの誹謗中傷も共感だけで起きている。それだけではない。差別そのものが共感だけの結びつきで起きているのだ。
　共感とともに論理性が必要であると考えている。一方、論理学的に演繹していけば、共感は得られないかもしれないが、論理に破綻がない限り、必然的な帰結に行きつく。そしてこの論理的思考は男女差別などの主張を展開する上で役立つだろう。この時、個人の感情ではなく論理体系の明解さを優先しなければ、不必要に議論を迷走させる。

社会の定義

　まず初めに社会を定義しなければならない。
　社会は人類一人一人の総体だと定義できる。
　国とは特定の法体系に於ける行政・司法・立法の三つの権力が及ぶ範囲を指す。例えば日本国なら日本の行政、日本の司法、日本の立法を指しており、国民により、それぞれの社会を構成している。
　国民とは該当する国籍の保有者である。したがって、人種・文化、使用言語などは関係ない。もし人種に限定すると、アメリカ国民という概念は成立しない。なぜなら、中国語の母語話者、イタリア語の母語話者など様々な人がアメリカ国籍を保有し、かつ、アメリカの社会に所属しているからである。もし、国籍以外の基準で考えるなら、普遍的な国民の定義が複雑になる。
　文化とは、人類一人一人の嗜好の観点で抽出した時の特徴と定義できる。またこの英訳であるカルチャーも同様である。例えば日本文化と言った時には日本国民の嗜好を指し、ティーン・カルチャーとは十代の嗜好を指す。
　なお、社会の定義に関連して、全員に当てはまる時には「すべて」、特定の一人を指す時には、「ある」、複数の個人を指す時には、その数に関わらず「数人の」、任意の一人を表わすときは「一人の」と表記する。

女性の定義

　次に本稿における女性を定義しなければならない。ここでいう「女性」とは男性器を持っていないすべての人を差す。これ以外の定義はありえない。例えば、もし子供を宿す能力があると定義した時に、不妊症の女性は除外される。また、男性に恋愛感情を持つと定義した場合、レズビアンは含まれず、また男性の同性愛者は女性と定義されてしまう。
　このような定義づけを行なえば、当事者たちにとっては疎外感を味わうと推察される。

女性一般は存在しない

　また注意しなければいけないのは、生物学的な定義以外に「女性一般」を定義づけする方法はない。思考や能力、言動などは人それぞれである。例えば女性はスポーツができないと言われることがあるが、この女性はいったい具体的に「誰」を指しているのか解らない。少なくともすべての女性ではないと言える。吉田沙保里選手やなでしこジャパンなどが反例として挙げられるからだ。また論理的な思考能力に欠けると言われるが、ソフィ・ジェルマンやマリー・キュリーを例示すれば女性だからといって論理的思考力に欠けているわけではないと解るだろう。
　つまるところ、性別によって特定の能力が劣っているなど、論理学的な意味では、存在し得ないのだ。存在するのは、個々人の能力であり、性別は偶有的な問題にすぎない。安直ないわゆる女性性／男性性についての言説は女性の社会進出をかえって妨げかねないのだ。
　言動もまた然りである。周りの男性たちが差別的な言動をしたからといって、全男性が差別的な言動をしているとは限らない。さながら周りの人たちが全員、日本語を話せるからといって、地球の全てで日本語が話せるとは限らないのと同じことである。早まった一般化は正しい理解を妨げ、その後の前提条件が崩れかねない。

傾向について

　それでもある程度の傾向は見出せる。例えば大多数の日本国民は日本語を話せるというふうに。このような時には、その傾向を具体的に数値化しなければならない。数学科と自然科学系統の女性進学率を数字として提示しなければ、前提条件の確認すらできないのである。
　傾向について言うなら、そのまま鵜呑みにするわけにはいかない。世間の雰囲気などに流される可能性があるからだ。例えば金正日を尊敬するか北朝鮮でアンケートをとったところで正確な支持率は調査できない。またガリレイの時代に地動説が正しいかと尋ね回っても大多数が指示しないと答えるだろう。
　それでも確かに賃金格差などの問題は存在する*1。一般的には「年齢、学歴、労働時間など属性の差異が挙げられる」。

平等の定義

　次に平等を定義しよう。

社会における平等

　あらゆる職業、あらゆる服装、あらゆる文化などで性差をなくすことと定義する。つまり職業の性差が男女差別になる以上、自衛官、警察、消防士など今まで男性の単一社会だったところに女性が進出し、逆に看護師など女性の単一社会だったところにも男女比が５：５になるのが望ましいと必然的に結論付けられるだろう。この結論は僕自身は違和感があるが、線引きをする場合、客観的かつ明確な基準が必要になる。残念ながら線引きをするだけの充分な基準が思い浮かばない。そしてこの論理を推し進めていけば、職業差別につながる可能性すら出てくる。また女性数人の一方的な基準で性による適正を決めてはいけない。男性の一方的な価値観を押し付けてはいけないのと同様、女性の一方的な価値観を男性に押し付けてもいけないのだ。
　女は守るべきだと言われることもあるが、すでに社会的・文化的な規範を含んでいる。フェミニズムの目的は社会的・文化的な性差の再考である以上は「女は守るべきだ」という言説も女性、男性双方のすり合わせを行わなくてはいけない。もちろん、男女に限った話ではなく、障碍者といわゆる「健常者」などにおいても当てはまる。例えば支援方法が本当に適切なのかなど。
　また、男性がスカートを履いていても個人の自由、バレンタインに男性から女性にチョコを渡すのも受け入れる。「逆チョコ」があると指摘するかもしれないが*2、逆ということは本来の要素があると含みを持っている。ただチョコを上げると言うだけで構わないのだ。
　したがってプロポーズなども男女平等を訴える以上は、同じ割合に近づくのが望ましい。しかし「逆プロポーズ」と言うばかりではなく3.6％*2に留まっている。

個人における平等

　これらは社会的な観点からの平等である。個人間における平等について考えたい。まず本気で解決したい時には、男女ともに専門家でもない限り、他人の意見を持ち出さないことが重要だ。話を合わせているただけかもしれないし、うまく伝わっているかもしれない。また、そもそも常に当時者だけが存在している。そして当時者同士の話し合いは男女間に限らず、科学的なデータより、自分の気持ちを論理的に語って説得するだろう。
　一言で言えば、発信者には哲学的に、受信者は文学的に受け取らなねばならない。つまり、自分の主張を論理的、体系的に説明し、可能な限り想像しながら話を聞く。例えば『異邦人』のムルソーがどのように考えてアラブ人を撃ち殺したか想像しながら読むように。可能な限り先入観を排し、言いよどみ、言い間違い、すべてが手がかりにして文字通り相手の主張に耳を傾けるのだ。男女間だけではない。障碍者といわゆる「健常者」などすべての人間関係において。本来、相手を理解するとはこのような営みに他ならない。

解決へのアプローチ

　解決へのアプローチは①目標設定、②調査、③行動に分かれる

①目標設定

　目標設定をする上で真の解決目標かどうかを考えなければいけない。例えば、最終的に暮らし向きを豊かにしたいと考えているのであれば、男女平等の問題は本質的でない。男女の賃金格差が解消されたからと言って、男性の路上生活者はいる。
　さらにいえば特定の一人が上がれば解決するのか、それとも女性全体の平均賃金が上がれば満足するのか考えなければいけない。
　いずれにせよ、以上の場合、本質は賃金格差や貧困の問題である。この場合はむしろ、男女問わずの非正規雇用の社員、低賃金のクリエーター、そして場合によっては障碍者などの低賃金労働者とともに声を上げていけば解決に近づくと考えている。障碍者やホームレスとともに行動したくないと思うかもしれない。しかし、この時点ですでに差別する側に回っているのである。
　また、労働環境を改善したいのであれば、労働基準法などの法律的な問題となる。この問題は弁護士や労働基準監督署への通達も視野に入れるべきである。もちろん、一つの団体だけに所属することはない。
　真の目標かどうか解らないこともある。この場合は思考実験を試みると見極めがつきやすい。例えば一億円毎月振り込まれたら問題が解決するのであれば、賃金格差の問題である。また解決しないのであれば別の要因に問題がある。例えば若返りの薬を飲めば解決するなら、年齢的な問題である。

②現状把握

　どのような情報を得ても、一度は自分の目で確かめなくてはいけない。例えば日本人の所得などである。なお所得の分布は正規分布ではないので、相加平均は使えない。
　重要な点は情報源が信頼できるかどうかである。例えば公式のサイトか、誰が発信しているのかをより正確に見極めないと、前提条件が崩れかねない。普段から幅広く教養を身につけるのが望ましいが、どうしても得手不得手はある。また忙しいと時間がとれない。
　そこで
・参考文献が示されているか
・著者の肩書は適切か
・一次情報が書かれているか
・他の文献はどうなっているのか
　などをもとに現在の状況を判断しながら対策を練っていく。例えば賃金の問題なら最低賃金は地域や業種によっても異なっている。また個人事業主の場合、そもそも最低賃金は保障されない。

③行動

　あいにく行動の知識は持ち合わせていない。しかし行動の際は選挙への投票が大前提である。また、change.orgなどのオンライン署名を集めることもできる。
　この場合、閲覧者全員に説得力があるよう、文章を練らなければいけない。②の情報がここで活きてくるのである。その際には、できるだけ解りやすく、論理展開が明瞭でなければいけない。具体的には、内容面で、
・ちゃんと数値を示す。
・一貫した論理
・定義は明瞭か
　表現面で
・日本語を正しく使う、書くときには必ず辞書を二冊以上引く
・二重の意味に受け取れないか
　などが挙げられるだろう。

フェミニズムを学びたいのなら

　フェミニズムに限らず特定の分野を学びたいときには、Wikipediaでの下調べが欠かせない。長い説明は読み飛ばしても構わないが、著名なフェミニストの著作のうち聞き覚えがある人をピックアップする。例えば平塚らいてうは高校の授業で習った人もいるのではないだろうか。「平塚らいてう」のWikipediaを見ると、著作や文献が出てくる。これらの本を読めば、フェミニズムの知識が身につくはずだ。
　また、「フェミニズム　入門」などとGoogleで検索しても情報が得られる。本を選ぶ際に注意すべき点は、著者の肩書と出版社名である。例えば自費出版を多く手掛けていたら信用性は低いが、岩波新書などは全般的に信頼性が高い。また青弓社など、出版社の特性も抑えておくと調べやすい。
　さらにジェンダーなどの関連語彙から紐解く方法もある。ジェンダーは文学研究などとも親和性が高い。例えば『グリム童話と魔女』はグリム童話とジェンダーの関係を考察している*4。また、最近のアニメ・マンガの世界からジェンダーに踏み込んでもいる。例えば、若桑みどりの『お姫様とジェンダー』はディズニーアニメからジェンダーを考察している*5。幸い、ジェンダー研究の入門書は豊富にあるので、すぐに見つかるだろう。解らなかったら図書館のレファレンスサービスを使うと、司書が調べ物を手伝ってくれる。
　一冊の入門書を手にしたら、その中の人名、署名を控えておいて、調べていく。その際にはアウトプットすると、考えがまとまりやすくなる。特に文字で記録しておくと復習に役立つ。もちろんフェミニズムに限らず、学習全般にも応用できる。例えばイスラムの哲学者、アル＝ガザーリーはイブン・シーナーに反対するために、その解説書を書いた。その解説書は正確で、長年、イブン・シーナーの賛同者だと誤解されていたほどである*6。この例からも解るように反対意見を唱えるにしてもまず、理解に努めなければ空虚な主張となる。そもそも相手の主張を理解しようともしないのに、自分の主張を聞いてもらうなど無理な話である。
　繰り返しになるが、あらゆる批判は正しい知識と論理的思考の上に成り立っている。

すべきではないこと

　もちろん、これは一つの考えにすぎない。ただ議論により、新たな意見は生まれる。したがって異論が封殺されるような土壌を作ってはいけない。これは民主主義の理念に反する。
　例えば認知バイアスなど広く一般に当てはまることを並べたてて男女の話にすりかえていた。反射的に拡散せず、論理的に考える、あるいはソースを確認するなどの作業を行なえば嘘だと解るはずである。このような態度は議論を萎縮させるばかりではなく論理、つまり知への冒涜にすら感じるのである。誤解は仕方がないにせよ、「疑似科学」が広まると、心理学者たちは火消しに回らないといけなくなるかもしれない。そしてこの分、彼らの時間を奪い、知の発展が遅れてしまうのである。
　真理を曲解しかねない以上、断固として反対しなければいけない。事実に基づかないのなら、あらゆる議論は時間の無駄である。

私情

　ツイッターでも少し書いたが、僕は障碍を抱えていて、女性からいわゆるマンスプレイニングの被害に遭うことが多い。
　例えば
・コンビニの女性店員に（タメ口で）「できる？」と聞かれる。
・本読んでたら隣のご婦人に「漢字読めるの？」と言われる
・友達と遊びに行くとヘルパーだと思われる（ご婦人に）
　しかし気にしないようにしている。もちろん、構音障害で言っても聞きとれないだろうと諦めてもいるが、Twitterでけっこう、お節介を焼いているからだ。僕が行なっているにもかかわらず、同様の行為を他者へ止めるように頼むのは虫が好いと思っている。
　どうして障碍を表に出していないかというと、僕のアイデンティティと障碍は偶有的な問題に過ぎないと考えているからだ。もし障碍者でなくても僕のアイデンティティは多分、変わっていなかっただろう。
　僕のアイデンティティは知の愛好家であり、一人のクリエーターである。したがってたとえ、たとえ反対意見でも、他者が主張する権利は守りたいと考えている。繰り返して言う。異論が封殺されるような土壌を作ってはいけない。植松聖やメンタリストDAIGOのような差別主義者さえ、共感も賛同も全くできないが、法に触れない限り、意見を主張する権利はあってしかるべきだと僕は考えている。これが保障されなければ表現の自由が危ぶまれかねないからだ。
　ただしもちろん議論の土壌さえ整えば、である。具体的には、繰り返しになるが安易に拡散しないで、その責任を一人一人が自覚しなければならない。

*1　Recruit Work Institute「女性の賃金（2020年11月版）」
*2　逆チョコは気持ち悪い？嬉しい？女子の本音とおすすめの種類
*3　「逆プロポーズの割合は？　みんな上手くいった？　体験談まとめ！」
*4　野口芳子『グリム童話と魔女』（勁草書房）
*5　若桑みどり『お姫様とジェンダー』（筑摩書房）
*6　Wikipedia「ガザーリー」

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2021年10月05日23:03

いわゆる「自己啓発書」について

カテゴリ: 雑記帳

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はじめに

　この記事は「自己啓発書」、「ビジネス書」を擁護するべく書かれている。しかし、まず最初に述べておく。定義の仕方にもよるが、僕は自己啓発書がはあまり好きではない。それどころか一冊も読んだことがない。それでも弁明しなければならないと思ったのは、大げさに言えば僕の思想上の問題からである。
　先取りして言うと、
（1）多様性を認めなければ文化は衰退する
（2）あらゆるものに優劣はなく、差異だけがある。しかもその差異もスペクトルのように連続的なものであある。
（3）有益か無益かは個人によって違う。つまり万人にとって有益なものなどない。
　要するに自己啓発書否定派には「他人の趣味に口を挟むんじゃねえ」、自己啓発本の熱狂的なファンには、「てめぇの価値観を押し付けてくるんじゃねぇ」、そして両者には「何を読むかは人それぞれだろ！」、とだけ言いたい。本当にこれだけなのだ。

定義をめぐる問題

　さて、自己啓発書とは何だろう。一見自明なように思える。「主に人生について取り扱う分野であるため人生書の一種とも考えられ、人生指南書などの表現も存在する」*1。しかし、多くの実存主義、純文学、宗教などにもこれらの問題を取り扱っている。
　したがって何を持って自己啓発書と考えるか明確に定義できないと考える。例えば『死ぬ瞬間、５つの後悔』*2はキューブラー・ロス*3やトルストイ『イワン・イリッチの死』*4などに通じるところがあるだろう。また『明日、死ぬかもよ？』*5はハイデガーのdas manとも関わってきそうである。他にも人生論はミヒャエル・エンデの『モモ』*6、アウグスティヌスの『告白』*7などでも語られている。

じっさい、私はかの物乞いよりも学問があるからといって自分のほうがすぐれていると思うべきではありませんでした。なぜなら私はその学問からよろこびを得ていたのではなく、ただ人々の気にいることをもとめていたにすぎないのですから。

つまりいくつかの文学では自己啓発的な要素を含んでいる以上*8、線引きはできない。加えて、解釈次第で自己啓発的な要素が読み取れる時があることだが問題を複雑にしている。
　仕事で言えば、シャーロック・ホームズの「ぶなの木屋敷」では、下記のセリフが出てくる*9。

　データ！　データ！　判断の材料がないよ！　粘土がないのに煉瓦が作れるか

　一見、ホームズのいらだちを現しているし、事実そうなのだが、プログラムのデバッグでは案外、この台詞を思い出すことがある。この他にも想像だけではなく実験で確かめながら考えていく大切さなどもホームズには描かれている。これはプログラムを組む際、実に重要な点となる。
　推理小説以外では荘子の「はねつるべ」の話が役立った*10。

仕掛道具が作られると必ずたくらみごとが行われるようになる。たくらみごとが行われるようになると必ず知巧を弄するたくらみ心が起ってくる。たくらみ心が胸中に生じると人間の純粋潔白な本来の心は害われ、本来の純粋潔白さが害われると霊妙な生の営みはかき乱されて不安定となる。霊妙な生のいとなみが不安定になれば、根源的な真理はもはや彼の生活を支えなくなってしまうのだ、と。

　もちろん、仕事柄、プログラムを組まないわけにはいかないが、プログラムに使われないようにしたい。具体的にはバグが起きたときには手作業でも業務ができるようにしなければならない。
　仕事のあり方について言えば、ジャック・フィニイにも出てくる。「おかしな隣人」は未来人が隣に越してくる話だが、未来は下記の通りになっていると語る*11。

人生は、ほとんど生きる価値がなくなってくる。だれもかれも、十二時間も、十四時間も働くんだ。収入の大部分が、税金に取られ、残りが、軍需品生産のため天井知らずに高騰する日用品を買うのに費やされるからだ。あらゆるものが、人工的に削減され拘束される。そうして人生に残された小さな悦びを台なしにするものがある──事実上の、死と破滅の確かさだ。ひとり残らず、自分のために働き、破滅のために我が身を犠牲にしているんだ。

　電通の事件や食品の高騰などを考えると、この台詞はリアリティがあるといえないだろうか。
　ジョブズなど成功者の自伝も含むこともあるが、『フランクリン自伝』*12などは恐らく自己啓発書と呼ばないだろう。それではこの本質的な違いとは何か？
　また『ブッダ　今を生きる言葉』*13などと、「スッタニパータ」は仏教を扱っている点では共通している。

読者の問題

　もちろん、熱狂的なファンの態度に辟易しているかもしれない。僕もそういう目にはオンライン・オフライン問わず何度か遭ってきた。しかし、非難されるべきはその読者である。読者全般でも、ましてや本でもない。
　もし、興味がないと断わっているのに、執拗に勧誘されたら、自己啓発書でなくとも嫌気が指すだろう。例えばサッカーの熱狂的なファンで、来る日も来る日もサッカーの話ばかり。この場合、サッカーに罪はないのは明らかである。
　もっとも、スティーブン・キングの名作映画「ミザリー」を見れば解るように熱狂的なファンはどこにでもいるのかもしれない。したがって頼まれてもいないにもかかわらず、何かを何回も勧めないことである。
　この辺りについてスペインでイスラム教徒は上手な対応をしていた。当時、イスラム帝国はスペインまで領土を広げていたが、コーランか剣か、つまり改宗か戦争かの二者択一ではなかったのである。非イスラム教徒には特別に人頭税を課していた*14。

あらゆるものに優劣はない

　あらゆるものに優劣はない。それどころか全てはグラデーションのように存在している。これが僕の根本概念である。例えば西洋と東洋はトルコを隔てている。東洋と西洋は地理的に言って、自明ではない。
　これはもちろん本においても言える。例えばマンガは低俗で、小説は高尚であると仮定したとき、まんがで読破シリーズは高尚だろうか、低俗だろうか。『漫画　君たちはどう生きるか』*15と吉野源三郎『君たちはどう生きるか』*16を比べたとき、一概に漫画が劣っているとも言い切れない。確かに原作に忠実ではないが、原作ではおじさんがどうしてコペル君を気にかけているのかの説明がされていない。一方、漫画版はそのエピソードも描かれている。こうのようなときに、どちらが優れているかは尺度によるだろう。つまりストーリー性と忠実さの二つの尺度である。
　加えて、漫画も近年では学術研究として扱われている*16。またシェークスピアも狂言も今でこそ高尚なイメージが強いが、当時の伝統芸能である。

有用性とは何か

　すでに見たように、何が有用かは時と場合によって違う。例えば小学校の先生なら鬼滅の刃などの話題のアニメをチェックしておけば、児童との話についていきやすいかもしれない。
　この文脈でファスト映画が問題になりがちだが、粗筋を見るのも、また粗筋だけを見るのも時には有用である。例えば、友達と話を合わせるときなどが挙げられるだろう。また、コヤニスカッツィなど前衛映画は粗筋を読んでからでないと挫折するかもしれない。また、誰かのリストを頼りにするのも悪くない。そもそもノーベル文学賞にせよ、直木賞・芥川賞にせよ誰かが選んでいるのである。世界の名著、世界の大思想などの叢書もまた然り。
　つまり熟慮せずに、価値を結びつけてしまうことに真の問題がある。その代表が有益性だ。有益性にとらわれすぎた結果が、やまゆり園の事件であり*18、メンタリストDaigoのホームレスへの発言*19にほかならないだろう。これは我々に置いても少なからず当てはまる。人間に有益な虫たちを益虫と言って大切にし、害を与える虫たちを害虫と言って駆除しているのだ。
　もちろん有益性も価値の尺度であるが、それ以外の尺度も常に考えなければいけない。無用の用である。これは学問の世界でも言える。数学者のガウスは整数論についてこう述べた。「整数論は数学の女王である」と。美しいが、何の役にも立たない、と自虐である。しかし、整数論は今日の暗号理論の基礎をなしているのだ。
　このような例は枚挙にいとまがないが、物理学の発見も然り。例えば光格子時計。300億年に1秒しか狂わないのだが*20、実用性は今のところ皆無である。しかし、時間の正体を探る上で貴重である。他にも重力波が観測できても物は落下する*21。
　読書論に近づけて言えば、「〈銀の匙〉の国語授業」が挙げられるだろう*22。中勘助の自伝小説『銀の匙』は岩波文庫で250ページにも満たない。これを橋本武は三年間かけて取り上げた。作中の菓子を食べ、凧が出てきたら実際に校庭で凧揚げを行うのである。いわく「早急に答えを求めてはいけない、すぐに役立つものはすぐに役立たなくなります」。
　もっとも、このすぐに解るものを欲しがるのは人間の習性だ*23。だからこそジョン・キーツはネガティブ・ケイパビリティ、つまり答えの出ない事態に耐える力を重視したのかもしれない。
　繰り返して言うが僕は自己啓発は否定もしなければ、積極的には賛同もしない。本の内容には関心がないのである。ただ多様な本が出版されることだけを願っている。
　というわけでみんな好きな本を読もうぜ！　ライトノベルもマンガも読書！

*1　Wikipedia「自己啓発書」
*2　ブロニー・ウェア『死ぬ瞬間の5つの後悔』（新潮社）
*3　エリザベス・キューブラー＝ロス『死ぬ瞬間』（中央公論）
*4　レフ・トルストイ『イワン・イリッチの死』（岩波書店）
*5　ひすいこたろう『あした死ぬかもよ?』（ディスカヴァー・トゥエンティワン）
*6　ミヒャエル・エンデ『モモ』（岩波書店）
*7　アウグスティヌス『告白（１）』（中央公論新社）
*8　どうして自己啓発書を取り立てて読まないかはここにある。つまり小説や哲学書を読んでいれば自然と自己啓発的な内容が目につく。アドラー心理学について知りたいならアドラーの著作、フローについてはチクセントミハイを直接読めば確実に知ることができる。
*9　コナン・ドイル「ぶなの木屋敷」（『シャーロック・ホームズの冒険』講談社）
*10　『荘子（外篇）』（筑摩書房）
*11　ジャック・フィニイ「おかしな隣人」（ジャック・フィニイ『レベル3』早川書房）
*12　ベンジャミン・フランクリン『フランクリン自伝』（岩波書店）
*13　六田知弘『ブッダ今を生きる言葉』（パイインターナショナル）
*14　シャルル=エマニュエル・デュフルク『イスラーム治下のヨーロッパ』（藤原書店）
*15　羽賀翔一『漫画　君たちはどう生きるか』（マガジンハウス）
*16　吉野源三郎『君たちはどう生きるか』（岩波書店）
*17　早川洋行「ジェンダーの知識社会学 : 人気マンガからみた日本社会」（『名古屋学院大学論集　社会科学篇』53-2）
*18　Wikipedia「相模原障害者施設殺傷事件」
*19　常見陽平『メンタリストDaiGoの差別発言大炎上に見た「教祖ビジネス」の危うさ』（BizSpaフレッシュ）
*20　安田正美『1秒って誰が決めるの?:』（筑摩書房）および、東京大学CAST『誤差「300億年で1秒」の光格子時計、何がすごい？どこに使う？』（日刊ゲンダイ）
*21　「重力波とは？」（Kagra)
*22　橋本武『〈銀の匙〉の国語授業』（岩波書店）
*23　帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ』（朝日新聞出版）

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2020年10月25日17:23

独学の心得

カテゴリ: 雑記帳

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はじめに

　僕は会社のブログを書いており、読書感想文、小説なども含めると毎日、文章を書いている。また仕事ではエクセルやVBA、HTMLなどに触れており、これらを含めると厖大な言葉に触れている。
　それにもかかわらず不特定多数の他人に向けて文章を書くのは余り得意ではない。一つはどのように受け取られるか解らない不安があるのだ。もう一つはある程度、僕の素性を公開しなければならない点にある。
　それでも独学について書こうと思った理由には、──傲慢かもしれないが──学校で成績が振るわなかった人を「ある種の」呪縛から解き放ちたいという思いがある。もちろん具体的な行動に移すかは読者に任せるが、参考になれば幸いである。

小学生時代

　のっけから私事を話して恐縮だが、最初に話さなければならない点がある。小学校時代、僕は成績があまり振るわなかったことだ。また言語にも障碍があり、流暢に話せない上、左右の指とも余り器用には動かない。左手のほうが麻痺がひどいが、右手の障碍もあり、社会人になってようやく箸が使えるようになった。また何かに熱中していると、文字通り周りが見えなくなり、全体像が把握できない。これは一応、「高次脳機能障碍」だということになっているが、僕はさほど深刻に受け止めていない。
　ちなみに身体障害者保持者であるが、あまり公言しないのは、
1.僕のアイデンティティにとって重要な要素ではないこと
2.僕の作品を先入観なしで見てもらいたいこと
3.反論できない要素を作りたくないこと
　が挙げられる。また今とは違い、中学生に上がるまでは本よりもゲームのほうが好きだった。

努力したら報われる！？

　それでも書こうと思った理由は、独学といわゆる「障碍」とが関わっているからである。よく努力したら報われると言うが、これは勘違いさえしなければ的を射ている。しかし残念ながら多くの人が誤解しているし、ある種のイデオロギーすら含まれているので、忌避される。
　貧困は複合的な要因が絡んでいるので、これが努力不足の結果と言うつもりはない。それどころか読書量と成功者を安易に結びつける昨今の風潮には疑問がある。そもそも成功とは何か個々人の価値観に大きく依存しているからだ。そうであるなら、貧困の中にあっても価値観を変えるだけで「成功」と考えることはできないだろうか。
　先も述べたように僕は障碍を負っている以上、世間一般の常識から見たら劣ってると言わざるを得ない。しかし、これは健常者と障碍者の二項対立、もっといえば健康至上主義を無自覚・無批判に受け入れているからである。例えば交通事故などでいつ後遺症が残るとも限らず、いつ障碍者になるのか解らない。いや、老いは避けられない以上、誰しも必ずある種の「障碍」を負うのである。しかし、安易な健康至上主義だけで生きてきたときには、精神を蝕みかねない。
　もちろん学歴至上主義を無批判に受け入れても然りである。学歴至上主義、健康至上主義などの価値観を抱くにせよ、一旦、真剣に検討しなければ軽薄な価値観になる。そして脱落せざるを得なくなったとき、過去の価値観にしがみつき、結果が振るわない責任を転嫁していく。むろんこれらは幻想にすぎない。
　別の価値観で考えれば、この幻想から解放されるのではないか。そして別の価値観を打ち立て、実践するためにはある種の「努力」をしなければならないのだ。本論はこのささやかな試みであり、既存の価値観への抵抗もある。
　問題の「努力したら結果が出る」という言説が真となり得るためにはこのように書き足さなければいけない。「努力したら〔何がしか形で〕結果が出る」と。具体例を挙げよう。例えば僕がパラリンピックを目指して毎日ジョギングに挑んでも、選手になれるとは限らない。その一点だけ見れば、無意味な行動である。しかし、ジョギングによって心肺機能の向上、ストレス解消、脳への刺激などさまざまな効果が得られるのは言うまでもない。また詩の音読を行なっても、流暢に話せるとは限らないが、韻律を楽しむことができる。何がしかの結果が出るとはこの点においてである。
　例えば、TOEIC900点代、あるいは英検一級を目指して英語に励んだが、何回受けても受からないとする。もちろん受験料などの兼ね合いもあるだろうが、たまたま受からなかっただけであり、今までの英語学習を否定することは全くない。

学校の勉強について

　まずはじめに断わっておくなら、学校は真実を教える場ではなく、様々な規則を教える場に過ぎないということだ。もちろん集団生活の規則も含まれるが、この他にも下記のようなものが挙げられるだろう。
・日本語で分かち書きはしない。
・助詞の「は」「を」「へ」はそれぞれ「わ」「お」「へ」などと発音する。
・小説は作者の主張を読み取らなければいけない。
・掛け算には掛ける数、掛けられる数がある
　云々。これらは全て一般には約束事の世界であり、学校の勉強は規則の暗記に始まる。いくら数学が演繹的な学問で規則の暗記と無縁であろうとも、十進法の四則演算を覚えなければ話にならないし、日本語の読み書きを覚えなければ本すら読むことができない。そういうことだ。
　ところが学問は規則を疑うことにある。例えば、音と文字の関係はソシュール言語学に、掛け算の順序問題は群論に行きつく。掛け算の順序問題が話題になりがちだが、類似の話は国語に置き換えても成り立つ。少なくともロラン・バルト以降の文芸評論の立場では作者の主張を読み取らなければいけないわけではない。ところが、規則を疑うには規則を吟味しなければいけない。
　つまり、学問と勉強で必要な能力は全く別であり、学校時代に成績が振るわなかったとしても全く問題はないのである！

何が好きなのか解らない場合

　しかし、自分が何に価値観を見出しているのかも解らない人も多いのではないだろうか。恋愛、友達、労働。作られた価値観の中で何となく選択しているのではないか。
　これらの見つけ方は学校は教わらないのだから無理もない。そして案外、簡単である。日記と小遣い帳。別に日記は一日の終りにまとめて書かなくても構わない。一行でも構わない。　もちろん小遣い帳は日記と兼用しても構わない。
　しかし、その日、その瞬間の気分を嘘偽りなく書く必要がある。もちろん誰かに見せなくても構わないし、その人を意識する以上、見せてはいけない。例えば親が憎いなら親が憎い、理解してくれないなら理解してくれない、苦しいなら苦しい、殺したいなら殺したい。
　さらに重要なのは、その気分がどこから来ているのかを探ることである。思考の過程も記述すること、むしろ書きながら考え、自分と向き合うことだ。知識は世界史、理科など学校の勉強だけとは限らない。自分についての知識、自分は一体何者なのか、知識について、恋愛について、労働についてなどを深く考察する必要がある。そして最終的には死生観。
　僕は子供時代、自分が死んだらどうなるかをよく空想していた。そこには恐怖など全くなく、夢から覚めたようにまた、ある一日から再出発するのではないか、と子供心に思っていたものだ。恐怖心が芽生えたのは中学生。具体的に何があったというわけではないが、死が猛烈に怖くなったのだ。強いていえばノストラダムスの大予言の影響かもしれない。今では死んだことがない以上、死んだらどうなるか問うのは無意味だと考えている。
　自分とは何か、これも考え出すと恐怖に襲われていた時期があった。僕などいなくてもこの世は回っていく。自明だと言うかもしれない。確かに自明である。しかしそれなら何のために生きているのだろうか。おそらくこの問いかけは〈この世〉が指し示すものが曖昧だったのだ。つまりA.僕の外から見た〈この世〉、B.僕の内側から見た〈この世〉。僕が死んでもAは消滅しない。しかしB.は世界そのものが消滅する。
　ところでこれを一般化すれば人間にも当てはまらないだろうか？　人間が滅んでも宇宙全体からは何の影響もない。一方で、人類そのものにとっては大問題である。環境保護も地球のためだと言いながら、その実、結局我々が住めなくなるからなのかもしれない。

お金を使うとはどういうことか

　お金を使うとはどういうことか。一見自明であるが、本気で考える必要がある。まず第一に貨幣価値は無尽蔵に湧いて出てこないということだ。金のなる木があったら、と空想する人も多いだろうが、実在しないし、実在したとしても、インフレーションが起きるだろう。
　例えばドイツでは昔、レンテンマルクを大量に刷ったために紙くず同然になった。このような歴史的事実は受け止めなければいけない。そのような状況で物欲の赴くままに買えないのだ。そこでどうするのか？　自分の価値観に照らし合わせながら買い物をしていけば、少なくとも物欲には踊らされない。
　例えば僕ならiPhone12もブランド物の服も不要である。しかし、文芸同人誌の会費、25000円程度を3ヶ月に一回くらい払っている。これに加えて、最近はコロナの影響で開催しなくなったが、読書メーターのオフ会、哲学書の読書会……。しかし、読書メーターのオフ会は知らない作家を知る機会であるし、哲学書の読書会は専門書に手を出す意欲にもつながっている。もちろんあくまでも僕の価値観に照らし合わせた結果に過ぎない。
　貨幣価値は有限であるが、これは究極的には時間においても当てはまる。例えば僕が作業所にいるまでの間は労働力を提供しているのは言うまでもない。つまり、自分の価値観にあった行動が制約されるのだ。
　もちろん僕の寿命は無尽蔵にあるわけではなく、もっと言えば明日交通事故で死ぬかもしれない。しかし、そのようなことを意識せずに生きている。少なくとも僕は恐いから目を瞑っているのだ。その結果、自分の価値観に照らし合わせて無為な行動をするのである。
　なお一言付け加えておくなら、鬱病などを患い、どうしても働けない人もいるだろう。そのような場合は生活保護、障害者基礎年金、あるいは公営住宅などの既存の制度を最大限活用して欲しい。特に障害者福祉制度を活用するには受給者証が必要となるが、診断を確定させる必要がある。精神障害の場合は等級にもよるが、医療費が安くなる。
　確かに寿命は有限であるが、無理をして寿命を縮めることもないのである。この先、病苦の経験が役立つかもしれないのだ。僕は不眠症を患っており、心療内科にも罹っているが、この経験は創作において役立っている。どのようなときに、なぜ憂鬱な気分になったのかを記録しておけば、自分についての知識が増えるのだ。

好奇心について

　とはいえ、義務教育課程で学校で勉強ができなかったばかりに、落ち込む人も少なくない。ここで三つのパターンが考えられる。
（1）学習障害、発達障害、イジメの被害者などで勉強意欲はあるが、自信を失った人。
（2）規則の暗記に嫌気が指してきて、投げ出した人。
（3）ゲームやSNSなどの誘惑に負けた人
　（1）はブラウザバック。こんな駄文を読んでいる暇があったら、早めに心療内科などの受診を勧める。今すぐにでも！　勉強なんて後回しでいいから診断を確定させなさい。

学校の勉強は苦痛だけど……

　（2）については学校の勉強と学問は別だと割り切って、疑問の解決にいそしむ。その場合、できるだけ、疑問をメモに起こすと効果的である。ちなみに僕はEvernoteを使っているが、これは僕がひとえに悪筆だからだ。身体障害とは関係なく、単に字が汚い。
　また繰り返して言うが、学校の勉強とは関係がない。したがって手書きに限らずメモをとる時は、意識を思考の整理に集中させる。字が汚かろうが本質的ではない。丁寧な字を書こうとするあまり内容が疎かになっては本末転倒である。
　特に手書きでメモを取るときには下記の点を心がけている。
・字が汚くても構わない
・誤字脱字があっても構わない。
・文法のミスがあっても構わない。
　またメモを取るだけでなく、論理的なつながりを持った文章にして、保存しておくとよい。僕の場合はブログなどで公開することで、モチベーションにもつながっている。文章化の注意点は通りである。

できるだけ真摯に調べる

　例えば英語版のWikipediaを調べなくてはいけなくなったとしよう。その場合、英語の辞書を引きながら調べたり、自動翻訳を参考にしたりしながらともかく自分なりに翻訳を試みることである。この時、ブログの執筆だけに注目すると結果が伴わなず、苦しくなる。また的外れだった場合に意気消沈する。
　しかし間違いなく英語の力は上達しているのだ。

完全には解らなくて当たり前だと割り切る

　本を読んだからといって完全には解らない。しかし、どこが解ったか、どこが解らなかったかをメモして残すことが重要である。

解らない点をそのままにしない

　僕も結構、放置しているので人のことは言えないが、解らない点は徹底的に調べることが大切。

新書なども適宜活用

　僕は哲学に興味を持ち始めた、大学生のころ、何を思ったかウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』に手を出した。挫折したのは言うまでもない。僕の失敗は難しい哲学書に挑戦したことではなかった。むしろ挑戦しただけでも意義がある。しかし、解説書に頼るのは負ける気がしたのである。特に岩波ジュニア新書は中高生が読むものだと決めつけ、読もうともしなかった。岩波ジュニア新書は、社会人が読んでも遜色ないと気付いたのは社会人になってからである。
　僕がようやく解説書を活用するようになったのは、樫山欣次郎訳のヘーゲルの読み始めたころだ。ちょうどインターンとして入った印刷会社の社長に長谷川宏の解説書を勧められたことがきっかけだった。
　この印刷会社は結局、力及ばず、三年で退職したが、多くのことを学んだ。「退職」だけ見れば失敗と言えるかもしれないが、その過程で得た知識・技術などを見れば、糧になっている。しかし、本気で取り組まなければ糧にはならない。

解ろうとする意欲

　先般、身体障碍だと書いたが、改めて診断を受けた際、左手はこれ以上、動かないと言われた。しかし、今ではブラインドタッチでブログを書くどころか、左手だけでコピー、ペーストができるようになったのである。医者を見返そうとしたのではない。ただ仕事で大量にコピー、ペーストをしなければならず、マウス操作が面倒なだけだったのである。
　また、「高次脳機能障碍」だと書いたが、不注意のあまり、ジョブコーチからコンピュータ関係の仕事は向かないと言われたことがある。それが今は仕事でVBAを触るまでとなった。もちろん就労移行支援事業所（A型）という特殊すぎる環境もあるだろうが、強いて一般化すれば下記の点になるだろう。
　権威が向いていないと言おうが、意欲に逆らってはいけない、と。反骨精神もあるが、それよりも面白そうだし、単調な仕事は面倒だったのである。そこでエクセルの関数から初めて、飽き足らず自然にVBAへと至った。
　そこでプログラミングを独学で勉強したいのなら、
1.できるだけ目標は具体的に、
2.ソースコードの丸写しで終わらせない。ソースコードをよく読んで、どうして動くかを理解すること
3.バグが起こったときは、九割、設計ミス。バグという結果だけに注目しないで、徹底的に調査。
　もちろん実務で時間に負われていてはこのような余裕がないだろう。だからこそ土日に樂しみながらプログラミングをするのである。

ゲームやSNSなどの誘惑に負けてしまう人へ

　別に負けても構わないが、使用時間を記録するだけで、反省になる。もちろん依存症の場合は適宜、医師に相談して欲しい。

ゲーム

　かくいう僕もついゲームに熱中してしまうことがあった。僕の場合、没頭すると六時間でも連続して遊び続けるばかりではなく、眠気すら忘れて没頭してしまう。
　もちろん読書などにも当てはまるので一概に悪いとは言えないと考えているし、僕の脳のクセなので、仕方がない。重要な点はどのように役立てていくかである。
　例えば僕はどうして没頭するのかを考えてみた。この場合、脳のクセ、つまり高次脳機能障碍という超越的な言葉ではなく、内面を見つめながら説明することだ。脳の断面を見せられても、本当のところ、実感が沸かず、こういう言葉を「超越的な言葉」と僕は呼んでいる。例えば誰かの脳の断面と取り替えられても僕は気が付かない。それよりも自分の内面のほうが、実感できるだろう。嫌なことがあるとゲームに逃避。なかなか反応が得られない創作活動よりも、すぐに反応が得られるゲームに意識が行くのだ。このことを知ってから、ゲームが詰まらなくなり、今では全くプレイしていない。
　さて、大げさに言えば自己省察につながってくるが、自分を知る上で重要である。したがって、ゲームなどの誘惑に負けた後、どうしてその行動に出たのかを真摯に考えれば、時間の浪費以上に大きなものが得られるように思う。
　またゲームの種類次第では次のステップにも繋げられるだろう。例えばRPGは物語の要素を含んでいるため、本気で遊べば文学の勉強にもなる。本気で遊ぶとはどういうことか。例えばエクスカリバーが出てきたらアーサー王物語を、メデューサが出てきたらギリシア神話を読むことである。
　他にも、絵画・イラストに興味があれば、キャラクターを描いてみたり、発表に当たっては著作権の条文を調べたりと「本気で遊ぶ」手立てはあるに違いない。

SNS

　今でもTwitterは時々覗くが、なかなか中毒性が高い。しかも僕は同人ゲームの制作メンバーとSNSで連絡を取っており、アカウントごと削除すると、支障を来す。
　そこでゲームの場合と同じように、どういう場面で使用しているかを記録に取った。人とつながりたいときに、具体的には誰かに話を聞いてもらいたいときに使っている。しかし会社の愚痴などではなく、もっぱら本や疑問が湧いたときにSNSで呟いて反応を待っていた。これには理由がある。以前、SNSの投稿で疑問が解決したのだ。
　しかしSNS、特にTwitterは議論に向かないと思うようになった。それは議論の仕方が解らない人があまりにも多いのである。ディスカッションとディベートは全く違うが、ディベートにもなっていない。
　そこで僕は読書会への積極的に参加している。幸い僕の言語も聞き取ってもらえることが多い。幸か不幸か最近はZoomなどのビデオ通話アプリも普及し、オンラインで読書会を行なっている。
　また他人の読了本を見て読書意欲がそそられるので、SNSも上手に付き合えば独学に活かせるといえるだろう。

学校の勉強ではない

　繰り返して言うが、学校の勉強ではない！　それは具体的に次のことを意味する。

暗記しなくてもいい

　世界史の試験などで暗記が苦痛だった人も多いのではないか。しかし、独学は暗記しなくてもいいのである。その都度、教科書などを手許に置きながら調べるだけで構わない。何回も調べるうちに、自然に覚えていく。
　なお、高校の教科書は指定販売店で一般人でも購入可能である。
　また基本的な言葉の意味も同じで、国語辞典、漢和辞典、英和辞典などを引いていくうちに覚えていく。しかし、あえて言うなら、調べた語彙をノートにまとめておくといい。
　英語は下記の点で比較的独学に適していると言えるだろう。
1.義務教育での課程に含まれている。
2.英語の案内板が駅に行けばいる。
3.インターネットには例文が溢れている。
　対訳がなされており、しかも修辞的な文章ではない点が教材を選ぶ上で重要である。
　また英語の利点は得られる情報が格段に幅広くなることにある。僕は哲学分野を中心に調べているが、少しマイナーな哲学者は日本語版のWikipediaに載っていない。
　具体的に言葉を学ぶに当たって気をつけたいのは、同じ物でも複数の言い回しがあり、それぞれニュアンスが違うことだ。日本語でも携帯電話、ガラケー、フィーチャーフォン、フィーチャーホン、ガラパゴスケータイなど様々な表現があり、それぞれニュアンスが微妙に違う。
　携帯電話は固定電話の対概念であり、スマートフォンも含む場合がある。ガラケーは市場の問題で、日本独自の進化を遂げたというイメージが強く、フィーチャーフォンは技術的な面に焦点を当てている。
　従って、日本語でも知らない言葉・漢字・表現が出てきたら辞書を調べて欲しい。例えば「果たしてそこにあった」という表現は馴染みがないかもしれないが、辞書に用例が載っている。

一つの日本語につき一つの英単語ではない

　英語についても同じことが言える。念頭に置くべき点は母語との対応関係である。例えば基本的な前置詞onは「上」とは限らない。接触しているかどうかが問題である。
　例えば、「The picture is on the table」は「テーブルの＜上に＞絵がある」と訳せるが「The picture is on the wall.」は「壁＜に＞絵がある」と訳す。また「the book on myth」は神話の専門書となる。つまり、onを機械的に「上」と覚えると book on mythへの対応ができない。
　逆に、aboveも「上」と訳せるが状況が違ってくる。これは同じ「上」でも接していない場合に使う。従って下記の二文は状況が違うのだ。
A.His palm is on my head.
B.His palm is above my head.
　Aは頭を撫でている状態であり、Bは教祖などが頭を手にかざしている状態である。このように同じ「上」と覚えると間違いを犯しかねない。
　また言語障害でも複数の言葉があり、意味が全く違ってくる。speech disabilityは全く話せない人、speech disorderは構音障害など上手く話せない人、language disabilityは言葉そのものの理解力がない人、language disorderは音と文字が結びつかないなど言葉の理解系統が上手く行かない人。
　否定の接頭語disに能力のabilityがついているので、disabilityは能力の欠如。disorderは命令・指示・秩序などを示すorderに同じく否定の接頭語disがついているので、命令系統の欠如になる。
　このことは英訳に於いても言える。例えば「お寿司、食べられますか？」を「Can you eat Sushi?」と訳すと、アレルギーがあるか、宗教上の理由で食べることができるかなどの意味になる。好みを聞いているのであれば「Do you like Sushi?」と僕なら言うだろう。
　英語の略称について言えば、PCRとOCRなど混同しがちである。その場合、Polymerase Chain Reaction、Optical Character Readerという風に正式名称を見てほしい。なぜなら、Polymerase Chain Reactionだとポリメラーゼの連鎖反応だと一目瞭然である。

教科に縛られるな

　学校では教科があり、どうしてもこの枠を超えることができない。しかし、意欲にブレーキが掛かるので、独学はそのようなことを気にしていけない。実際、明治期の文学作品を鑑賞するに当たって、日本史や地理の知識があったほうがいい。
　したがって今は現代文の勉強をしているから日本史は脇に置いておこうなどと考えなくても構わない。例えば夏目漱石の小説『三四郎』ではストレイシープという言葉が重要となるが、ここから英語の勉強に移っても構わないのである。

電卓を駆使

　数学の独学では電卓、エクセルなどの使用を勧める。もちろん、いくらエクセルを使っていても計算ミスはつきまとう。行列の計算など計算が複雑になればなおのことである。そこで、一つの対策として、順番を意味で固定している。例えば個数×被乗数の順番。エクセルの場合だと対応するセルに色が付くので見直しがしやすい利点もある。
　なぜなら数学は計算技術を問うものではないからだ。数学は論理の証明過程を重視しており、例えば下記の問題を扱っている。
　３の倍数を判定するには、各位の数を足してそれが３で割れるか調べればいい。その理由はどうしてか？
　この問題はコンピュータで解くことができない。そもそも問いの意味すら理解できないのである。また次の疑問を幼少期から僕は抱いてきた。そもそも自然数の「１」とは何か、と。この意味が真に理解できた人はごくわずかである。僕の疑問は端的に言えば、１ダースの鉛筆をどのようにカウントするか、という問題である。

疑問に思ったら一旦立ち止まらなくてはいけない

　立ち止まっても構わないのではない。独学では疑問に思ったら立ち止まらなくてはいけないのだ。
　１ダースは12本なので、12本と数えればいいかもしれない。しかし、１ダースを１個と数えることもできるはずである。工業製品はほぼ同じ大きさ、重さなので問いの本質が見えにくいかもしれない。例えばりんご１つとは何か。自明だろうか？　現実のりんごは、大きさも重さもそれぞれ違うのは言うまでもない。そこで、もう一度問う。「りんご１つとは何か」。こう考えることはできないだろうか。現実の「りんご」大きさも重さも違う。たとえば一番小さい軽いりんごは、一番重いりんごは２倍重いものとする。この場合、個数は１つでも、重さは２である。果たして大きなりんごは「１」か「２」か。
　またこういう疑問も成り立ってくる。果たして鉛筆とりんごは全く別のものなのに同じ「１」として表わしていいのだろうか、と。数えられる以上、具体的なものがあるときはまだ混乱しない。しかし、１時間、２時間などものが数えられないときも具体的なものと同じ演算規則の上に成り立つ。この奇妙な感覚。
　もう１つ疑問がある。数学の本をいろいろ読んでいくうちにどうもある一定の規則で演算をしているに過ぎないと解ってきた。なるほど、これなら具体的なものと抽象的な概念の間で同じ計算規則が成り立つのも理解できる。しかし、別の疑問が沸き起こってこないだろうか？　もし、完全に計算規則だけを取り扱っているのなら、現実的な問題は解決できないはずである。
　数学は過度な抽象性があるにも関わらず現実となにがしかの対応関係を持っていると信じるに足る根拠がある。もし何の対応関係も持たなければ、現実の物理・経済現象を説明できないからだ。例えば工藤新一がAPTX4869を飲まされて江戸川コナンと名乗ったなど名探偵コナンの作中設定をいくら語っても意味がないのは現実世界と交わらないからである。
　もちろん実数の範囲では交換法則が成り立つ。しかし疑問に思って欲しいのは、どうして交換法則が成り立つかである。交換法則が成り立つから、あるいはペアノを持ち出しても知った気になっているだけに過ぎない。本当に問うべきはどうして交換法則が成り立つかである。
　高木貞治の『新式真術講義』を当たったが、挫折した。

数学的な世界と現実はどう結びついているのだろう？

　数学は高度に抽象的な世界である。例えば三次元なら立体で把握できるだろうが、４次元、５次元、ｎ次元などは想像の埒外にあると言わざるを得ない。僕含め数学に苦手意識がある人はこの抽象性が原因だと思う。
　人間は具体的な物があるとイメージが湧きやすいが、抽象的になればなるほどイメージが湧きにくくなる。例えば一般的な愛は抽象的で想像しにくい。家族愛、恋愛、慈愛、友愛など様々な次元があるからだ。あるいは推しへの愛もあるかもしれない。しかし、個々の感情について思い浮かべていけば、一般的な愛情についても法則性・共通性が見出せるはずである。

公式を覚えなくとも構わない

　僕が数学の独学で気を付けた点が、この具体性である。例えば微分はグラフの傾きと考えずに一瞬の速さとして考えた。時速60キロで車を1時間走らせると、30分走らせると、20分走らせると、10分走らせると……どこまで言っても平均の速さである。しかし現実は、一定の速さで動いているはずがない。これを求めるのが微分である。覚えたのはたったこれだけ。あとの計算方法は高校の教科書をその都度確認した。
　積分は複雑な図形の面積や体積を求める方法で、みじん切りにして、直方体に再構築する作業だとだけ覚えた。このように覚えていけば、的はずれな使い方をせずに済むのである。
　喩えて言うなら、ドライバーで玉ねぎを切ったり、包丁でネジ止めをしたりするようなもの。まず、この公式が何を意味するかを把握したほうが解りやすい。
　不思議なのは微積分に於いて意味の上では全く違うにも関わらず、どうして逆の演算が成り立つのかである。数学史の上でも全く別のものとして扱われており、ニュートンとライプニッツが独立で証明したことも付言しておく。

誰かと競わなければいけない

　学校の勉強ではどうしても点数を付けられる。それは教育の規則である以上、仕方がない。しかし独学は誰かと競う必要など全くないのである。むしろ競ってはいけないと言っても構わない。
　なぜなら劣等感が芽生え、大事な問いかけをくだらないと自分で決めつけてしまいかねないからだ。またどうしても社会生活で競争を意識せざるを得ない。もちろん、意欲的になるかもしれないが、焦るあまり真摯な思考ができなくなる。そして、これは独学において、最大の弊害になるのは言うまでもないだろう。せめて独学の時間だけでも自分と真剣に向き合いたい。

歴史の勉強

　歴史の勉強も人名を覚えなくても構わない。例えば古代ギリシャ時代を調べれば調べるほど似たような名前にが出てくる。アナクサゴラス、アナクシマンドロス、アナクシメネスなど……。しかしこれらの人たちはインターネットで「古代ギリシア　哲学者」などで調べれば業積などが出てくる。従ってどのような単語で調べたかを把握しておくだけでいい。
　むしろ重要な点は原因の把握である。例えば、プラトンと同時代の弁論家にイソクラテスがいるのだが、双方ともに毛嫌いしていた。プラトンは貴族制を支持してエリート教育を施していたが、イソクラテスは貴族制か民主政の間で揺れ動いていたように思える。
　どうしてプラトンが貴族制を支持したかと言えば、一時の感情だけでアテナイの民衆はシケリアに宣戦布告を行ったが、大敗を喫した。しかも、アテナイの市民は自分たちの投票を棚上げし、政治家の責任にしたのである。衆愚政治に陥るくらいなら、一部のエリートで政治を運営すべきだと考えていた。数学なども彼の学校、アカデメイアの科目に含まれていることから、論理性を重視していたと解るだろう。
　一方のイソクラテスは神話・歴史・修辞技法を重視していた。修辞技法とはいかに言葉を飾るかであり、民衆を説得する術である。ここになって双方が不倶戴天の敵同士となった理由が解るだろう。

独学とは孤独な作業である

　独学とは孤独な作業である。なぜなら、原理上、疑問は完全に共有できないからである。従って問いの意味すら解らないに決まっている。それでも構わないが、このような疑問は大事なのは学校で教わらない点である。学校は規則を教える場であり、真実を教える場ではないと書いたが、真実とは何かも疑問に思えてくる。
　例えばこのような極論を考えてみよう。世界はすでに滅んでおり、水槽に電極をつながれて生きている。つまりいわゆる「現実世界」は脳の幻覚にすぎない。あなたはたまたま何かの拍子でこの「真実」を知ってしまった。しかし、この「真実」を「現実世界」で話しても当然、真実と受け止められないだろう。果たしてどちらが「真実」なのか？　ＳＦ映画の「マトリックス」はこのような問題を問うている。そして、このような問題を真摯に考え続けるのが独学なのだ。

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	情報を記憶評価顔星

2019年04月29日20:54

独学の方法

カテゴリ: 雑記帳

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はじめに

　ツイッターで要望があったので、独学の方法を挙げておきます。取り急ぎ断っておかなければいけないのは、あくまでも趣味の一環として独学をしているということです。僕の場合、小説執筆の参考程度にプラトン、アリストテレス、デカルトなどの哲学書を読んでいます。
　したがってできるだけ万人に当てはまるように書きますが、必ずしも万人に当てはまるとは限らないということだけはご承知おきください。

独学に必要なもの

　独学に必要なものは、
1.根気
2.試行錯誤を楽しめる心の余裕
3.活字中毒であること
4.インターネット環境
　です。原則的にお金も先生もいりません。記憶力も必要ありません。

インターネットで下調べをしましょう

　まずはインターネットで下調べをしましょう。具体例として、平安時代を舞台にした小説を書きたいとします。
　そうしたら「平安時代　小説」などという検索ワードで調べます。また日本史の教科書、国語便覧があればそれらも合わせて参考にします。YouTubeなども参考になるでしょう。
　ちなみに高校の教科書は通常の書店では置いていませんが、販売店があります。これもインターネットで調べました。ただ教科書の値段は書かれていないので、事前に問い合わせたほうがいいかもしれません。また教科書ガイドはAmazonで置いています*1。

ブックリスト

　もちろん通史的な情報があれば便利なのですが、例では平安時代の情報が必要でした。従って、見繕った本は下記の本です。
・下向井龍彦『日本の歴史07　武士の成長と院政』
・大津透『日本の歴史06　道長と宮廷社会』
・ビギナーズ・クラシックス『源氏物語』
・与謝野晶子訳『源氏物語』
・夢枕獏『陰陽道』
　本格的に勉強したいなら『紫式部日記』、『枕草子』なども挙げられますが、断念。古文は本当に壊滅的。
　ちなみに日本の歴史シリーズを踏破するのもありかもしれません。僕はそこまでの根気はありませんでしたが。

図書館へGO

　独学したいなら図書館を使い倒しましょう！　棚になくても大丈夫。検索システム（OPAC）に掲載されていれば取り寄せてくれます。
　検索システム（OPAC）に掲載されていなくても大丈夫。レファレンスカウンターの司書さんに言えば、定型図書館から取り寄せてくれます。
　公立大学なら入れるところもあります。例えば名古屋市民なら名大の図書館が利用可能。愛知県民なら愛知県立大学の図書館が利用できます（遠いけど＞＜）ただ愛知県立大学の場合は学生が優先になります。また私立大学でも区民に開放していることもあります。
　またレファレンスカウンターは本探しも手伝ってくれます。

本格的なものを最初から

　これも人それぞれなので何とも言えませんが、本格的な研究書を最初に読むようにしています。ええ、撃沈しますよ。読みこなせたら独学の必要なんてありません。
　しかし、この本を理解しようという目標にはなります。さらには、解説書ばかり読んでいると、理解度が自分の中ではっきりしないという欠点もあります。目標は解説書の理解ではなく、原典を（少しでも）理解できるようになることですから。
　例えば現代語訳でも構わないので、源氏物語を読みたかったら、まず手にしてみましょう。ビギナーズクラシックなどを読んでも本物を読まなければ理解できません。
　もちろん解説書から読んでいくのも一つの手です。その場合は岩波ジュニア新書が役立つでしょう。この岩波ジュニア新書は中高生と銘打っているものの、内容は大人が読んでも遜色ありません。

ノートの取り方

　集中できる場所は人それぞれです。参考までに僕はベッドの上で寝ながら読書するのが一番集中できます。
　またノートの取り方も人それぞれとしか言いようがありません。ところでこのノートですが、ノートさえ取れば受験などは別にして、要点をまとめれば記憶力は不必要。だって必要ならノートを見ればいいだけです。
　デジタルデータか、手書きかも一長一短ありますが、手書きをオススメします。
　デジタルデータは一見便利ですが、汎用性がありません。日本史の勉強ならデジタルでも構いませんが、数学を勉強しようとなると、式を打ち込むのが面倒ですし、微積分の計算をしようものならグラフを描かなければいけません。またデータが消失する危険性もあります。
　ノートの一番上には
作者名『書名』（出版社、出版年）①
そしてページ数、コメント。
　を書くようにしています。出版年を書くのは、文庫版と単行本版ではページ数が違ってくるからです。

1.字は丁寧に書くな

　学校のように丁寧な文字を書かなくても構いません。むしろ丁寧に書くことを意識するあまり、思考が疎かになっては本末転倒。大事なのは、ストレスなく思考の過程が追えること。
　自分に読めればそれでいいのです。そしてこのノートこそが宝になるでしょう。

2.ノートには通し番号を！

　またノートには50などの通し番号を振ることをお勧めします。手書きには検索できないというデメリットがあります。このデメリットを補うのが、通し番号。
　例えば下記のように打ち込みます。
　（ノート50）チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産（下）』（河出書房）⑥ポストコロニアル？
　これはピップが中東へ行ったことを語る場面で、僕が実際に取ったメモですが、このようなリストをデジタル化しておけば検索が効きます。
　この時、例えばディケンズの小説でポストコロニアルの視点から分析できないか、と思ったとしましょう。この場合、ベッドの下から50番目のノートの該当箇所をめくればすぐにたどり着けます。
　なお、xlsでも構いませんがcsvやtxtだと汎用性が高くなるでしょう。

3.鉛筆を！

　鉛筆を使っていますが、ボールペンだとインクがなくなった等の場合、思考が途切れちゃうんですよね。その結果、何を書こうとしてたか思い出せないという自体になりかねません。

4.漢字が面倒な言葉は代用で

　例えば「憐」と書くのが面倒なのでpityとも書いています。また、権を「权」、「職」は「𫟉」と書いています。重要なのは後から読み返して自分が解るかどうかです。調べている間に肝心なことを忘れるのが一番あってはならないこと。それだったら初めから調べなければいい。
　また手近にノートがなければ、レシートの裏でも喫茶店の紙でもいいので、とりあえずメモしましょう。転記するのは非効率。ノリで貼ればいいだけ。

5.見当はずれでもそのまま

　大事なのは見当はずれでもそのまま残すということ。例えば数学の計算ミスはそのまま残します。消してると面倒だし。

数学

　数学の独学は一見難しいように見えます。しかし、180度見方を変えれば数学の独学は簡単です。計算ミスを減らせ、と言われたと思いますが、計算は電卓を叩けばOK。

数学は国語

　数学は計算技術ではありません。数学は国語です。何を言っているんだと思うかもしれませんが、厳密な説明文です。したがって文章を理解する力こそが数学の基礎だと言えましょう。
　例えば台形の公式は覚えなくても構いません。二つの同じ台形を組み合わせれば平行四辺形になります。大きな平行四辺形の底辺＝（もとの台形の上底）＋（もとの台形の下底）になります。
　しかし、これは二倍になっていますよね。そこで台形の面積を出すには２で割らなければいけません（イメージが思い浮かばない？　図に起こしましょう）。
　このように公式を暗記しなくとも論理的に考えれば解けるのです。ただし受験には向きませんが＾＾；

体感する

　これは代数でも同じです。機械的に計算すると、表現が変わったら同じ意味なのにわけが解らなくなります。例えば下記は同じものを指しています
　97gの水に塩を３ｇ溶かすと何％になりますか。
　３％の塩水100gがあります。塩は何グラム入っていますか。
　３％の食塩水100gを作るには、水と塩それぞれ何g入れたらいいですか？
　機械的に計算せずに、まずは実際に塩水を作って飲んでみましょう。計算は一番後。かなり塩辛いですよね。これなら似たような問題で0.3％、あるいは30％の食塩水と答えないのではないでしょうか（30％の食塩水なんて塩が多分、沈殿します＞＜）
　ちなみに普通の海水の塩分濃度は3％です。
　ではもう一問。2kmを2時間かけて歩きました。分速何mでしょう。
　これは是非とも実際に歩いてみてください。速度を変えたり、信号で停まったり、靴を直したり、時速1km、つまり毎分正確に約16.7mで歩いていませんよね。機械でないのですから歩けるはずがありません。
　では瞬間の速さを求めるには……。ここで微分が登場するわけです。まず微分の計算式を覚えるのではなく、微分を体感しましょう。数IIBの範囲までなら、数学的な意味は体験できます。
　積分を学びたいのなら適当に落ち葉を拾ってきましょう。何を使ってもいいから、この落ち葉の面積をできるだけ正確に図ってみてくださいね。これが積分。
　ちなみに微積分は株の動きなどの関係から、経済学にも応用されています。したがってもし、経済学部卒業の人物を登場させたいのであれば、実際の計算はできなくとも微積分とは何か知っておいたほうがいいかもしれません。

問題集を解く

　問題集を買う人もいるかもしれません。一問が自力で解けるようになるまで、何日もかけてください。できればどのような考えに基づいて式を組み立てたのか説明できるようになるまで。
　ちなみにこの数学の能力は推理小説を書くときにすごく重宝します。

プログラム

　プログラムの独学も難しいように見えます。しかし人間を動かすよりもプログラムを動かすほうが遥かに簡単です。人間だと余計なことまでしますが、プログラムは余計なことはしません。これが何よりありがたい。
　まずプログラムは数学ではなく、国語です。すごく頭の固い人に説明する手順書を作っていると思ったら当たらずといえども遠からずかと。
　Lesson1では、MsgBox "Hello,world"を出して、Lesson2で……、こういう順番に課題を行なっていく人もいるでしょう。しかしこれはプログラムを組んだ気になっているだけ。しかもプログラムを勉強した気にはなりますから、的外れなことを言ったり、挙句の果てにソースコードを書き換えたり、
しかもそのくせ作業前のバックアップは取っていなくて戻せなくなって……、失礼しました。
　実際に一から組むとなると、何から手を付けていいのか解らなくなります。ええ、本当に……。
　プログラムの勉強は実際に組んでみること。具体的なものをであればあるほど勉強になります。またあらゆる独学に言えることですが、ことプログラムはある意味で冷酷。独学のレベルにおいて正常に動かなければ九分九厘、プログラマーが未熟だからです。ええ、独学のレベルにおいては。

英語

　英語の独学は目的によって方法が異なります。

英会話

　外国人と会話をしたいのなら、まず、facebookに登録して、外国人の友達を見つけましょう。
　僕の場合、９．11のときにイスラム教の人と話したくなりました。コーランに関して日本語訳を読んでも解らない。調べてもアラビア語のサイトばかり。そこで現地の人に聞いてみることにしたのです。幸い、オランダ在住トルコ人の男性に話しを聞くことができました。
　まず最初に覚えたのがJust moment, I consultant dic（辞書引くから待ってて）という言葉。これは本当によく使いました。
　それから学校の英語はほとんど使いませんでした。どういうことか。過去形は「I did go」「I goed」で通じました。I wentが正式な言い回しですけど、不規則変化で覚えにくい。
　それからI am a poor speaker of Englishと言えば配慮してくれました。

英語のサイトが読めるようになりたい

　目的のサイトに行って、英和辞典を引きながら唸りましょう。文学でなければ何とかなります。特に定まっていなければ、日本の新聞社の海外向けサイトが打って付けです。いざとなったら答え合わせができますし。
　文学は凝った言い回しがあるので、一筋縄では行きません。しかし、文学を勉強したいのであれば岩波文庫から対訳の詩集が出ていますので、そちらをお勧めします。和訳を隠して自分で翻訳してみると力が付くはず。僕は和訳のみを読んだけど！
　また駅の案内板でも勉強できます。
　フィネガンズ・ウェイク？　あれは英語でなくジョイス語なので日本語訳でも理解できません。

*1　詳説日本史図録編集委員会『山川詳説日本史図録』（山川出版社）

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2019年04月24日19:15

同人誌を配りたければ興味あるかは聞くな！

カテゴリ: 雑記帳

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僕は文芸同人誌にも投稿しています。毎号、定期的に執筆しているが、意外と困るのはその配布方法でしょう。今回はどのように配布したらいいかを僕の経験を元に紹介します。

絶対にすべきではないこと

　興味のない人に配るのが最悪。捨てるに捨てられませんし、場所ばかり取ります。
　いや、そんなこと言っても「興味ある？」と確認した、と言うかもしれません。しかし、です。面と向かって断れますか？　したがって興味があるかどうか聞いてはいけません。
　興味があると確定していない限りは。もし同人誌が捌けたとしても、相手が読まなくては意味がありません。例えば、街中で新興宗教の勧誘に耳を貸さない理由と共通している点があります。どんなに素晴らしい教えだと新興宗教の信者が確信していても、興味がなければパンフレットは見向きもされません。
　ここで新興宗教の信者を「作者」、「教え」を作品、パンフレットを「同人誌」に入れ替えてみましょう。どんなに素晴らしい作品だと作者が確信していても、興味がなければ同人誌は見向きもされない、という文章になりますね。悲しいかな、これが現実。

まずターゲットを絞ろう

　逆に相手に興味がある可能性があれば、告知する価値はあります。そのためにはターゲットをできるだけ明確にしなければなりません。闇雲に宣伝しても徒労に終わります。
　例えばマンガの同人誌と文芸同人誌とはターゲットが違います。またライトノベルの同人誌か、純文学の同人誌かでも年齢層が違います。これは顧客を落胆させないためにも大切なこと。
　TENは純文学の同人誌なので「いわゆるライトノベルではなく、一般文芸に近い小説です。」と冒頭に書きました。漫画の場合は画風の好みがありますから、一ページくらいサンプルとして掲載してもいいかもしれません。

宣伝文句を考えよう

　宣伝文句を考えます。何？　宣伝文句が思い浮かばない？　物書きだろうがぁぁ！　冗談半分ですが、半分は本気です。物書きなら、自作の宣伝文くらい考えましょう。客観的かつ簡潔に。
　例えば、TEN114なら、「・あなたはこの世界を本当に見ていると果たして断言できるのか？　もし誰かに操られているのだとしたら……（No.114）」という広告文を付けました。
　ツイッターでの宣伝を考えると100字くらいがベストだと思います。したがって「頑張りましたのでもらってやってください」という一文は余計としか言いようがありません。他人が見るのですから、頑張るのは義務。「もらってやってください」、もらう気がなければメッセージは送りませんし、やってくださいという言い回しは傲慢に見えます。
　イラストレーターなら仕方がないでしょうが、物書きなら宣伝文こそ一言一句気を付けなければなりません。いわばサンプルです。イラストレーターがぐちゃぐちゃの漫画をサンプルとして載せていたら、読む気が失せませんか？

価格は表示すること

　金銭トラブルにならないように価格は明確にしておきましょう。意外と忘れがちなのが、送料と消費税。
　人間心理というのは不思議なもので、金額にかかわらず多く要求されると、不満を抱きます*1。例えばイオンでは税込価格で統一していますが、これには次の狙いがあります。

「だまされたと思う消費者も少なくない」と大手スーパー関係者は明かす。このため「無印良品」の良品計画やしまむらなどは税込み価格の表示を続けている。

　もちろんこれは消費税に限らず、送料などでも同じです。
　また、金銭の授受が発生したら、請求書（あるいは領収書）を同封しましょう。内訳明細書も書けば安心していただけると思います。

いざ宣伝！

　心がけていることは迅速な対応です。例えば
・発送を先延ばしにしない。
・メールを受け取ったらすぐに感謝のメールを送ること。
　またTENの読者層は一般文芸が好きな人です。文学フリマやテキレボなどの他にも下記のところが考えられます。

オフ会

　僕は読書メーターのオフ会で配っています。しかし、宣伝禁止のところもあります。したがって周りの状況と主催者の様子を伺ってからのほうがいいかもしれません。読書メーターの特徴はオリジナルの本を登録できること。直接は送付に結びつかなくとも、本の存在は示すことができます。
　またこれはSNS全般に言えますが、自己紹介に創作をしていると書いています。ポートフォリオのような感じで！
　こうすれば、同人誌には興味がなくとも他の作品に興味を示してくれるかもしれません。
　したがって普段から、
・コミュニティへ書き込む
・他人の記事にコメントを残す
　などを心がけたほうがいいかもしれません。自戒を込めて。

mixi

　mixi、facebookのコミュニティで宣伝しましょう。例えばmixiなら、
・あげるからください
・あげます＆ください
　等が挙げられます。
　ちなみにfacebookはどのような優先順位で他のユーザーに表示されるか、計算式が公開されています。その中に投稿への反応も要素の一つがあります。もしfacebookを利用して作品を宣伝したいのであれば、積極的にコミュニケーションを取らなければいけません。

ツイッター

　フォロワーがいなければ宣伝効果がないと思うでしょう。しかしハッシュタグを使えば、少人数でも大丈夫です。

ジモティ、ヤフオク、メルカリ

　ヤフオクとメルカリは試したことがないので解りませんが、ジモティから送付に至った例もあります。ただジモティは猥褻なものは出品できませんので注意が必要です。

ブログ

　意外と忘れがちなのがブログです。その際、役立つ情報を書いておけば、同人誌の発送にはつながらなくても、記事を通じて他の作品に興味を持ってくれるかもしれません。

結論

　というわけで、文芸同人誌『TEN』に興味があったらメールください！　送料も含めて０円でお送りいたします。
　いわゆるライトノベルではなく、一般文芸に近い小説です。

例えば
・架空の詩人を評伝風にまとめたパロディ論文『斉藤明夫試論』（No.115）
・あなたはこの世界を本当に見ていると果たして断言できるのか？　もし誰かに操られているのだとしたら……（No.114）

　送料無料でお送りします。

*1　「税込み表示、イオン模索、レジでの困惑を解消、小売業界、追従の動きも」（日経新聞）。

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2018年12月19日18:40

～的という言葉について考えてみた。

カテゴリ: 雑記帳

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　日頃から物を書いていると、日本語を意識せざるを得なくなります。
　～的（「～」には任意の名詞）とよく言いますが、これは便利な言葉。しかしある意味で厄介でもあります。

厄介な理由

　厄介な理由は唯一つ。既存の名詞にくっつければ自由に言葉を作れるからです。ちょっと作ってみましょうか。
　男性的
　女性的
　比喩的
　社会的
　技術的
　理論的
　挙句の果てには、「プラスティック的」「シリコン的」という言葉さえも意味が何となく通じてしまいます。ただし言いたいことが正しく伝わっていない可能性があります。例えば
　青くて丸みを帯びた車を見て、次のような会話がなされたとします。
A「女性的だよね」
B「えー？　そう？　男性的だよ」
　まさに「的」の使用法で齟齬が起きているのです。Aさんは丸い車体から女性の身体を連想しています。そういった意味では「女性的」。
　一方のBさんは、青色という色から「男性的」と言っているのです。

一般化

　「的」はこのように定義できます。
定義：ｎ的はｎ自体および話者がｎから連想される事象を指す（ｎは任意の名詞）。
　例えば「男性的な女性」と言いますし、「女性的な女性」とも言います。男性的な女性は男性から連想される事象を含みます。例えばスポーツ、機械、短髪……など。
　「女性的な女性」には同語反復のようで少し違和感があります。ｎ自体を含まずに、としたほうがしっくり来るかもしれません。しかし、理論的としたときには、明らかに理論そのものを含みますよね。

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2018年10月20日11:14

ストレスの元凶について知の愛好家が考えてみた

カテゴリ: 雑記帳

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どうも対人関係でイライラして寝付きが悪かった有沢です。パソコンでプログラムを組んでいるとき、バグが起きてもさほどイライラしないのですが、対人関係だけは弱いんです。
　さて、最近ではストレスマネジメントなどと言って、ストレスを管理する方法が流行っていますね。ストレスマネジメント関係のブログも多く書かれているようです*1。まず初めに断わっておくなら、心理学者でもなければ、脳科学者でもありません。強いて言えば「知の愛好家」でしょうか。
　しかし、ストレスは管理できる、という考えが幻想なのです。

そもそもストレスとは

　そもそもストレスとは何なのか考えれば解ること。典型的なイライラを考えてみましょう。
・上司との関係が上手くいかない
・子供が明け方まで起きている
・人身事故で列車が遅れている
・パソコンのOSが起動しない
・地震の影響で仮設住宅に余儀なく済んでいる
・月給が少ない
・小説で新人賞が取れない
・同人サークルが自然消滅した。
・ブログのPVが伸び悩んでいる
　最後の二つは個人的なことですが、これらには全て共通点があります。
　思い通りにならない、つまり、何かを自分の支配下に起き、管理したいという気持ちです。そして管理し、制御しきれないから、ストレスになるのです。例えばパソコンの電源が入らなくて、イライラしたとしましょう。この場合、パソコンが自分の力で制御できないからイライラするのです。現に僕はこの手のトラブルにあまりイライラしません。まず、BIOSが立ち上がるかどうかを確認し、原因を一つずつ潰していって丹念に原因を探っていけばほぼ、原因が見えてくるからです。

ストレスの根源は支配欲

　例えば……、「上司との関係が上手くいかない」場合、上司に言うことを聞かせたい、という願望。
　子供が明け方まで起きているなら、子供を言うことを聞かせたいという願望。
　もし夜更かしすると子供の健康に悪影響が出るから寝かせようとしてる、と反論するかもしれません。しかし、寝たけりゃ勝手に寝ます。現にある閾値を超えると、猛烈な眠気に襲われるそうです。
　つまり、自分が寝たいのに子供の物音で寝れないので、子供を無理に寝かしつけようとしてるのです。そして、自分が寝たいのなら耳栓を買うなどの対応策をすればいいだけのこと。
　どうして、「子供の健康に悪影響が出るから寝かせようとしてる」などと言い訳するのでしょう。それは、「子供を管理している」自分を認めたくないから。子供への愛情には支配欲が潜んでいると認めてしまい、心の暗部を直視することになるから。
　つまり自分の心さえも支配できてないのです。自分の心も管理できないのに、他人を支配できるわけがありません。ましてや地震や景気などは言わずもがな。何かを管理できるという幻想から抜け出せば、ストレスが溜まりにくくなるのではないでしょうか。

支配欲の根源は孤独

　そもそもどうして僕含め、他人を支配しようと思うのでしょうか。命令に従わせて、王様気分を味わいたいのでしょうか。確かに命令に従うと気持ちいいですよね。
　しかし僕はそれ以上に「自分の考えが正しいか」を常に確認したいという不安があるような気がします。つまり考えが同じであると確かめて安心感を得ようとするのです。しかし同じ考えかどうかは原理的に確かめられません。
　唯一の確認方法は行動と発言を通してですが、これも嘘を言っているかもしれないので確実ではありません。つまり、どう足掻いても他人の心を知ることなど不可能であり、したがって自分の考えが本当は正しいかどうかなど確かめることは原理的に不可能です。だからこそ考えであると同じであると強迫的に確かめたくなります。
　同じ考えであると確認したい気持ちは、同じ行動であると確認したくなり、最終的には同じ行動にしたい、という願望につながります。同じ行動にしたい、という気持ちは管理につながるのです。

ストレス管理の矛盾

　さて、ここでストレス管理という言葉について立ち戻ってみましょう。「〈何か〉を管理したいのに、制御しきれない状態」のときにストレスが発生すると述べましたね。
　さてこの〈何か〉をストレスに置きかえてみましょう。「ストレスを管理したいのに、制御しきれない。このことでまたストレスが発生する」という問題になり、悪循環にも陥るかもしれません。
　ではどうしたらいいのでしょう。簡単です。
　何かを制御しようと思わなければいい。ただ、ありのままの環境を受け入れて、自然に抵抗しない。それだけ。
　だから僕はLINEで返信がなくても全く気にしません。送ろうが送るまいが、相手の自由。僕が口を出すことでもないからです。返信は欲しい、と相手に伝えることはしますけど、それだけです。
　もう一つ言うと、ゲームが無性にやりたくなることも。そういうときは欲望を制御せずに思う存分遊ぶことにしています。「あぁ、また欲望に振り回されてるなぁ。でもそのうち飽きるだろ」と諦めながら。依存症の手前なのです*2が、思う存分遊べば、満足します。
　ゲームの欲求が下がり、読書や執筆など、他の娯楽の割合が相対的に増えていくのです。

僕にとっての知識

　何かを制御するために知識がある、という工学関係の人はそう思うかもしれません。もちろん情報工学はコンピューター制御に役立っていますし、物理学は原子炉の制御に役立っています。
　しかし「制御できる」ものが広がるにつれ、本来制御してはいけないものも制御できるという幻想まで抱くようになりました。何が本来制御してはいけないものかは人それぞれあるでしょうが、僕が思うものは二つ。
1.原発
2.個人の心
　です。原発については、完全に制御技術が確立すれば外しますが、個人の心については制御してはいけません。何があっても。

何が合理的なのか

　こんな話を聞いたことがあります。ある会社で入力作業を丸一日掛かって行っていた。データをコピペするだけなので、マクロを作ったら、既存の社員からクレームがきた。曰く「暇になったじゃないか！」と。
　僕は両方とも合理的だと思っています。ただ最終目標が違うだけ。合理的に仕事を終わらせるのか、合理的にサボるのか。
　合理的というのは「ある目的」を達成するための最短手段です。したがって最終目的が違えば、当然、何を合理的とするかは違ってきます。
　例えば、名古屋から大阪へ行くとします。新幹線が一番合理的だと思うでしょう。本当ですか？　ここで立ち止まって下さい。
　もし相手が各駅停車で適当に下りて、適当に泊まる。宿が取れなければ寝袋でも構わない。このような旅をしたいなら、JRが一番、合理的です。
　また、サウンドノベルの背景写真で通天閣の写真が必要なら、フリー写真などで探すのが一番合理的です。さらにいえば大阪に友達がいて、メールを送るだけで撮るなら、フリー写真を探すよりも合理的です。
　このように何が合理的かは目的によって変わってきますし、相手の条件によっても変わってくるのです。

合理性という病

　もちろん、仕事なら「合理的」に進めなければいけません。しかし、クリエイターにとって、あるいは知識の愛好家にとってはこの「合理性」は大敵。

機械的に解くこと

　例えば、数学の問題。x²+3x+1=5において、xを求められますか？　もちろん解の公式を知っていればすぐに解けるでしょう。しかし解の公式を覚えなくても平方完成や因数分解で求められるのです。
　中には解の公式を使わないほうが早く解ける場合すらあります。
　(x+9)(x+8)=0
　をわざわざ展開しなくとも、答えが出ているようなもの。
　(x+9)=0もしくは(x+8)=0
　ここからx=-9とx=-8
　とすぐに求まります。しかしある種の合理主義に陥ると、わざわざ展開してから解の公式に当てはめるという非常に不合理な事態に陥りかねません。つまり二次式が出たら解の公式と短絡的に考えると、こういう結果になります。

知の本質

　もちろんテストの点を取るためなら「合理的」と言えましょう。しかし少なくとも知の愛好家なら、この態度は避けるべきです。なぜなら小手先の技術だけで、大切な問いかけをしていないからです。
　どうして、９×0=0なのか？　そしてこの数式は具体的にどんな状況なのか？
　例えば9×1ならこういう少なくとも二つの意味になります。
1.　１袋９個入りの飴が１袋あったときの個数（算術的な意味）
2.　短辺が1ｍ、長辺が9mの土地の面積（幾何学的な意味）
　さらに不思議なことは、どうして9×1と1×9は状況が違う場合があるのに、同じ答えになるのか。「１袋９個入りの飴が１袋」と「１袋１個入りの飴が９袋」。個数は同じですが、状況は違いますよね。
　そして、この9×1=1×9について数学的な証明がなされたのは、19世紀になってからです。

合理主義

　そして、少なくとも本当の意味で理解するには長い年月を要します。かなりの長丁場。一生考えて続けても解らないこともたくさんあります。数学者の中には一生一つのテーマに捧げ、ついに解らずに終わった人もいるほど。過度な合理主義に流されなければ、丹念に納得行くまで調べる力が身に付きます。
　そして一つのことを丹念に調べれば、長期的に見てストレス解消につながるのです。
　
　

*1　ストレスは自分でコントロールできる。ストレスマネジメントとは？
*2　ダウンロードして遊ぶゲームが中心だということもあるかもしれない。逆にオンラインゲームは経済力やコミュニケーション能力などゲーム以外の能力が絡むので、すぐに飽きる。

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	情報を記憶評価顔星

2018年08月22日20:52

感動ポルノの物語分析

カテゴリ: 雑記帳

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　とうとう24時間テレビの季節がやってきた。感動ポルノと揶揄されているが、チャリティ精神の観点からの批判が目立つ。障害を見世物のようにする姿勢に批判的な意見もあるが、個々人の自由だと思う。例えば、ドナ・ウィリアムズは障害者としての体験を出版している。ドナも障害をある意味で商売の道具にしているのであり、その意味で「見世物」にしているのと変わらない*1。
　このような視点ではなく、「物語」の視点で読み解いていきたい。

感動ポルノの定義

　差し当たって感動ポルノを論ずるに辺り、定義しなければならない。かつてバリバラで感動ポルノを取り上げた時に感動ポルノの特徴として下記の要素を上げた*2。
「大変な日常」⇒「過去の栄光」⇒「悲劇」⇒「仲間の支え」⇒「いつでもポジティブ」
　つまり物語の時系列としては下記の通りである。
「過去の栄光」⇒「悲劇」⇒「大変な日常」⇒「仲間の支え」⇒「いつでもポジティブ」
　このような物語の流れに加え、もう一つの要素がある*3。

「以前、映画を作った時に、主人公の友人が車椅子を使っている設定にしたら、結構、批判された。なんで車椅子？車椅子の意味があるの？って、すごく言われた。」

　つまり、障害が物語のプロットとは関係なく使われている、という特徴である。感動ポルノの対象は障害者に限らない。貧困などにも当てはまる。
　したがって、感動ポルノを下記の二点を含む物語と定義する。
定義1.社会的弱者が大変な日常を送り、乗り越える話
定義2.社会的弱者の属性は必然性がない。例えば、障害者でも貧困でも物語進行上、何の影響もない。

なぜ「感動ポルノ」が氾濫しているのか

　実は「過去の栄光」⇒「悲劇」⇒「大変な日常」⇒「仲間の支え」⇒「いつでもポジティブ」という物語は作りやすい。もちろん、類型化されていることもあるが、古今東西、作例が豊富にある。
　例えばホメロスのオデュッセイアも、
王（過去の栄光）⇒漂流（悲劇）⇒キュクロプス退治（大変な日常）⇒仲間の支え⇒生還（いつでもポジティブ）
　という物語の構成になっている。また少年マンガはほとんどがこの構成である。仮に『幽☆遊☆白書』を例に取ると下記のように示される。
　生者（過去の栄光）⇒事故（悲劇）⇒暗黒武術会、仙水との戦いなど⇒仲間の支え⇒生還。
　浦飯幽助を社会的弱者に当てはめるかは疑問が残る。しかし、戸愚呂弟や仙水忍などと比べると霊力差があるので、弱者に含めることにした。このように、冒険譚と感動ポルノは物語構成が重なっている。
　したがって古今東西で使い回されていて、手垢にまみれているのだ。
　つまりクオリティを度外視すれば、大量に物語が生産できる。例えば下記の物語は典型的な感動ポルノである。
　物語例１）水泳選手を目指す⇒事故に遭い両足切断⇒泳ぎたいという願望⇒パラリンピック出場

必然性を持たせる

　実は水泳選手、両足切断、パラリンピックにしたのは理由がある。水中では両足があると、水の抵抗から速く泳げないのだ。
　しかしどのような経緯で事故にあったのかが決まっていないので、まだ「必然性」が足らない。
　物語例２）水泳選手を目指す⇒大会に向かう途中で事故に遭遇⇒泳ぎたいという願望⇒パラリンピック出場
　という具合に必然性を持たせる。友達と遊んでいる時に、事故に遭う話よりは物語の上で必然性が高い。

全体のテーマを決める

　さらにこの物語の存在意義も重要である。もちろん資本主義なので障害者を利用してスポンサーを集めたい、というのが本音だろう。しかし、それだけならどのような「物語」も選択可能である。
　障害者雇用の問題に焦点を当てて、下記の物語も作ることができるのだ。
　物語例３）仕事で失敗が目立つ⇒部下からバカにされる⇒鬱病になり、心療内科へ⇒発達障害のチラシを目にする⇒手順書を作ったら成功
　それではどうして物語例２（あるいは物語例３）を選ぶのか？　そこにも根拠が必要だ。物語例２なら下記のテーマが盛り込める。
　テーマ１）夢はなにがしかの形で叶う
　そうすれば下記の派生物語2-2を作ることができる。
　物語2-2）主人公の父親は作家を目指していたが、今は中学校で国語教師をしている。夢を諦めたにもかかわらず、夢を諦めるな、と熱く語っていて、主人公は父親を疎ましく思っていた。しかし小説の素晴らしさを教えたいという理由から、中学校で教鞭を取っていたと知る。
　このように派生物語を作っていけば、定義2の問題は克服できる。したがって感動ポルノにはならない。

問題は

　障害者を扱っている作品が問題なのではなく、必然性がないところで障害者を出しているところに問題がある。別に障害者に限った話ではない。物語作りにおいて、特殊なエピソードを目立たせようとすれば合理的な理由付けが必要となる。
　例えばウィリアム・フォークナーの『響きと怒り』*4では〈語り〉の問題点を浮き彫りにするため、谷崎潤一郎の『春琴抄』*5では佐助の行動を説明するため、それぞれ障害者を出している。
　伏線を回収しないと、消化不良に陥ってしまう。そして無理に消化するために著者の目的を考えてしまうである。芥川龍之介『藪の中』は意図的に伏線を回収していないが、感動ポルノにはそのような目的が感じられない。
　そうだとすると安易な感動を押し売りするためだと、すぐに感づいてしまう。つまるところ「物語」の作り方に関して無自覚なのである。
　ここでドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』と24時間テレビチャリティマラソンとの決定的な違いが明確になった。『自閉症だったわたしへ』は自伝であり、ドナの世界観を示している。つまり、彼女が書かなければ『自閉症だったわたしへ』というテクストは成立しえなかった。
　一方のチャリティマラソンは24時間テレビという物語を考えると、誰が出ても番組そのものには影響がない。それどころかチャリティマラソンを走らなくても番組そのものは成立するのだ。

*1　ドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』
*2　【生放送】検証！「障害者×感動」の方程式
*3　同上
*4　ウィリアム・フォークナー『春琴抄』（新潮社）
*6　芥川龍之介『藪の中』（青空文庫）
*7　なお、これはテクストの内容ではないことに注意。

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	情報を記憶評価顔星

2018年05月05日11:38

『たられば』は現実逃避ではない。むしろ現実を見つめるきっかけに

カテゴリ: 雑記帳

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　東京タラレバ娘という漫画が人気らしい。読んだことはないので詳しくは言及できないが、タラレバについて、考えてみようと思う。本稿では＜たられば＞を肯定的に、創造力の原動力として捉えようという試みである。

たらればの定義

　まず「たられば」を定義しなければならない。現実にありえないことを色々空想することだと、一先ず定義する。例えば
（1）「宝くじに当っ＜たら＞」いいのに、
　という空想が典型的な例である。
　ここで疑問に思わないだろうか。宝くじを買わなければ当たる確率は０％だが、宝くじを買えば、一等の三億が当たる確率は０％ではなくなる。
　すぐにこういう反論も成り立つだろう。大金を得たいのに具体的な行動を起こしていないではないかと。しかし、「宝くじ売り場に行って300円を支払う」という具体的な行動を起こしているのだ。これは確かに詭弁であるが、上手な反論が浮かばない。
　具体的な行動を起こさないで、空想している人を「たられば」と呼ぶことにしたい。

リスクマネジメントとしての「たられば」

　またこういう場合は「たられば」とは言わない。ハサミを渡す子供へ、
（2）「怪我し＜たら＞危ない」と
　注意する場面である。確率の問題ではないし、子供が次教えた通りに渡す確率は計算できない。しかし、この両者には共通点がある。

アルゴリズムとしての「たられば」

　補足としてプログラミングとしての「たられば」を挙げる。どうしてこのように考えに至ったのかが解るかもしれないからだ。
　例えばもしエクセルで点数が80点以上だっ＜たら＞合格、というプログラムを作ったとしよう。この場合はIF関数を使うのだが、この場合は「たられば」とは呼ばないのは明白である。
　しかし何％の確率以上なら＜たられば＞とは呼ばなくなるのだろうか？

＜たられば＞には願望が含まれている

　さて共通点があると先に述べた。それは願望が含まれているという点である。宝くじには少ない労力で利益を出したい、という願望が、そして子供への注意は怪我をしたくないという願望が。

自己省察としての＜たられば＞

　＜たられば＞を本気で突き詰めると、自己省察につながってくる。例えば、結婚相手が欲しいという人は、結婚さえできればいいのか……極論、相手が日本国籍になりたければ、結婚相手はいるだろう。しかし、それで満足だろうか。
　満足なら結婚そのものが目的。
　満足でないなら結婚とは別のものが目的になる。例えば幸せ、老後の不安、世間体……。どれが自分にとって大事なものなのかを考えれば自己省察につながってくる。

創造性としての＜たられば＞

　また＜たられば＞は創造性の原動力にもなります。例えば少ない労力で利益を出すには、という考えを突き詰めていけば起業につながってくるかもしれない。また、誰かいい結婚相手が現れないかという願望は恋愛小説や恋愛漫画を読めば満たされる。
　恋愛小説を書く気になるかもしれない。事実、商業作品でも＜たられば＞を含んだ作品も少なくない。また演劇やドラマも＜たられば＞を多く含んでいる。いや、むしろ＜たられば＞でできていると言っても過言ではない。
　またネット含め、本好きの人との語らいから出会いでファンクラブを立ち上げることもできる。要するに想像だけではなく自分で創造することが＜たられば＞か否かを分けるのかもしれない。