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社会主義 (講談社学術文庫 511)

概要

 1918年にウィーンで、ヴェーバーが社会主義を批判した講演を行ないました。1917年がロシア革命なので、その翌年に行なわれた講演ですね。この本はその内容です。解説も充実していて、ヴェーバーの社会学に疎い僕でも理解が進みました。
 ちなみにヴェーバーの時代には社会主義と共産主義の区別がはっきりしていないのか、混同して使用していますので、注意しなくてはいけません。
 社会主義は個人の格差を直そうと、医療、教育などを国家で行なうものです。一方、共産主義は生産手段を完全に国有化するものです。
 ヴェーバーは社会主義のいきすぎた官僚制度を批判します。もちろん官僚制度そのものは資本主義にもありますが、社会主義ではそれが進むというのです。
 政治を合理化すると行き着く先は官僚制度です。そして共産主義は国民の自由を奪う、とヴェーバーは指摘します。まず、官僚の仕事はただ黒塗のベンツで出勤し、印鑑を押すだけの簡単なお仕事……ではなく、国の事務*1をすることです。例えば予算関係の書類を作ったり、書類の受理などが挙げられます*2。つまり国の仕事が多くなればなるほど、それを処理する官僚は多く必要となってくるのです。

なぜ共産主義は衰退するのか


増える官僚

 生産手段を国有化する共産主義は、官僚を多く必要とします。それだけ国の仕事が増えるわけですからね。
 また、共産主義になると職業選択の自由が制限されます。例えば、大企業では部署を変わりたい場合は異動願を担当部署に提出しなければならず、人事部などの印鑑が必要になります。
 これは国が大きな工場と化した共産主義体制でも似ています。つまり職業(=部署)を変えるのにも国(=会社)の許可を得なくてはいけないのです。なぜなら、計画的に経済を進めるということは、そこにいる作業者の数まで考えなくてはなりません。
 そして共産主義国では、その書類の手続きも官僚の仕事です。

現場の人間と経営者に求められる資質は違う?

 もう一つはプロレタリア独裁に関して彼らは政治の素人だった事が上げられる、とヴェーバーは指摘します。彼らは現場ではプロですが、マネジメント力はなかったのです。
 長年にわたり仕事にたずさわり 労働の諸条件をピンからキリまで知りつくしていようとも、それだからといって、工場経営そのものを知っていると信じるのはいうまでもなく由々しき誤りでありましょうから。
 現場の人間はその現場のことだけ分かっていても人の動かし方が分かっていないことが多いんですね。これは同人サークル関係に携わっていると、実感します。本当に。
 僕含め文章書き*3は音楽のビットレートとか、プログラムのことはほとんど知りませんし、絵師さんはプログラムのことは知りません*4。つまりそれぞれのクリエーターさんの取りまとめ役、意見を集約・調整する人がいないのです*5。
 つまり、ヴェーバーの言い分は現場の人間(しかも末端)とそれを動かす人は求められる資質が違う。現場の人間は機械の使い方などの知識はあっても、「計算、商品知識、需要状況の知識、技術的訓練」などの知識はないわけです。恐らく計算とあるのは会計などの知識だと思います。
 そしてこれらは細分化され、より専門化された方が効率がいいため現場の人間は知る機会がないと言っています。例えば経理部、開発部、営業部・マーケティング部、社内教育部*5と細分化されています*6。経営者の仕事はそれらの情報を整理し、どのように舵取りをしていくかだと僕は思っています。
 さて、ヴェーバーは上のようにプロレタリアート独裁の破綻を予見します。僕は現場の人間でも十分、経営者になれるし*7、また経営陣には現場上がりの人間を加えなければいけないと思います。むしろソ連が行きづまった原因はスターリンがアホだからだったと思うんですよね。トロツキーが政権を取っていたら幾分か変わってたかも……。
 プロレタリアート独裁について(というか独裁政権全般について)、悪く言われがちですけど、ハイリスクハイリターンな政権だと思うんですよ。つまり、聖人君子が独裁政権を握ればいい方向に動きますし、ポル・ポトやスターリンみたいな人が政権を握れば一気に悪い方向に転げ落ちる、そんな政治体制だと僕は思うんですね。
 キューバがそこそこ成功してる理由は、カストロが「個人崇拝を嫌い、私利私欲に安易に振り回されない強固な信念の持ち主」*8だったからです。

ヴェーバーの問題意識

 話が大幅にずれてしまいました。ヴェーバーの批判の矛先は俗流マルクス主義であって、正統派マルクス主義については賛成はできないけれども「天才的な発想」と讃えているのです。
 正統派マルクス主義とは政治(上部構造)と経済(下部構造)の関係を研究したり、マルクス経済学の概念を整理したりとマルクスの原典に従って研究する立場です。一方の俗流マルクス主義はプロレタリア革命に重点を置いています。しかも当時のドイツでは、「硬直した革命的イデオロギーにしがみつきながら、じっさいはそれとうらはらに革命的情熱を失い、物質上の生活利害に汲々とするゆがんだ姿」が、ドイツ社会民主党の中にあったからでした。どこの社民も一緒ですねw
 これと似たようなことは身近にもあって、例えば、
・働きたいとか就職口見つけなきゃなー、とか言いながら全く就職活動をしない人
・コンセプトだけ熱弁して、実作業は全くやらない同人サークルのディレクター
・仕事する、仕事するとか言っておきながら休載ばかりの某漫画家
・「安全性第一!」とか言いながら原発稼働をする某政治家
・作家になりたいとかほざきながら、ブログだけ更新するワナビ
 ……絶望s(ry

*1 エンゼルバンクコラム「官僚の言い分」参照。
*2 <国家公務員はこんなもんですよー>参照。
*3 同人ゲームではシナリオライターの位置付けが著しく低い!
*4 しかしWebデザインも兼業でやっていらっしゃる人もいるので、HTMLやCSSの知識もある人もいる。尊敬ー。
*5 実際にこのような部門が一般的かどうかはさだかでない。
*6 このような関係はマルクス『ドイツ・イデオロギー』(岩波書店)で述べられている分業の考えとつながってこないか?
*7 パナソニックの前身である松下電工(松下幸之助)はもちろんキヤノンの御手洗毅もマサチューセッツ工科大学で技術職、NTTdocomoの夏野剛も技術職。また、海外ではAppleのスティーブ・ジョブズなどが挙げられる。ちなみにビル・ゲイツも技術者だが、はったりや口先でのしあがった。
*8 wikipedia「フィデル・カストロ」より引用。



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